研究内容

建築環境・エネルギーのシミュレーション法

シミュレーションにより、室内環境の快適性と建築・設備の省エネルギー性を評価するためには、建築と設備システムの熱平衡状態を正確に求める必要があります。その解法やシミュレーション法を研究しています。最近は、建築総合エネルギーシミュレーションツールBESTのためのシミュレーション法を提案すると同時に、建築エンジンの開発を行いました。

窓システムの性能評価

ガラス建築は、高性能な窓システムがあってはじめて実現されます。近年、ガラスの種類が多様化し、さらに、エアフローウィンドウ(AFW)、プッシュプルウィンドウ(PPW)、ダブルスキンなどのように、窓内に空気を通す高性能な窓システムも出現しました。よい建築をつくるためには、事前に環境やエネルギーを推定し評価する必要があります。多様な窓の熱性能値の計算法を研究し、設計と評価のための窓性能値のデータベースづくりを行っています。

建築一体化空調の計画法と運転法

 建築一体化空調は、躯体蓄熱空調、自然換気併用ハイブリッド空調、床吹出空調、床冷暖房、高性能窓システム、アースチューブ・クールピットなど、建築と空調システムとを一体的に機能させ、良い環境を造り出そうとする空調方式です。これらは、建築とシステムが複雑に関係するため、性能予測が難しい方式です。床冷暖房、高性能窓システムのほかに、躯体蓄熱空調、床吹出空調などに関して、シミュレーション解析を行うとともに、計画法や運転法の提案、設計に必要なデータ整備のために研究を行っています。

都市緑化と外気温度分布

 今や、Google Earthは、日常生活のなかで非常に身近なものになっています。この研究では、Google Earthの画像を、研究にも利用しました。画像解析から、日本列島や世界主要都市の地表面緑被率や、水、宅地などの被覆率を求め、ヒートアイランドに影響する地表面被覆状況の現状を把握し評価するものです。さらに、都市の外気温度分布の実測調査を行い、地表面被覆特性との関係を調べています。

環境建築の性能検証

地球環境負荷を低減し、かつ健全な室内環境を実現するために工夫を凝らされた建築、都市環境との調和を目指す建築など、画期的で挑戦的な環境建築が次々に提案され建設されています。盛り込まれた手法が、季節や使われ方によってどのような効果を示すかは、綿密な実測調査を行わない限り把握できません。また、環境建築の効果検証は、今後の環境建築の発展に繋がる重要なものです。実測調査は、室内の熱・光環境や気流の分布や、都市への放熱、設備システムの運転状態、建物の使われ方やの居住者による評価などを多角的に調べ、性能評価を行います。

アトリウム空間の熱環境評価

 アトリウムとは、広いガラス面の開口をもつ吹抜空間のことです。アトリウム空間は、独特の上下温度分布を形成しやすく、また、極端な高温面や低温面が生じやすいため、細心の注意を払って設計されます。主にアトリウム建築の実測調査を通して、その熱環境の形成機構を研究してきました。また、熱画像と魚眼写真によりアトリウムの放射環境を解析評価する方法を提案しました。
。ところが、夜間に運転を停止することによる蓄熱の影響や快適性への放射熱の効果を推定するのは簡単ではなく、未だに十分な設計法が確立されてはいません。冷温風を吹出す空調と放射冷暖房とうまく組み合わせると、快適で省エネな環境造りができる可能性があります。床冷暖房併用空調の設計計算法の確立を目指して、詳細なシミュレーション解析や設計法の研究を行っています。

吹抜空間と建築の通風性

 アトリウムや階段室などの吹抜空間を、建物内の垂直方向の空気の経路としてうまく利用すると、風がないときにも自然通風効果を発揮します。吹抜空間に十分な日射を取込めると、ソーラーチムニー効果により、さらに通風が促進されます。最近は、自然通風しながら冷房する自然換気併用ハイブリッド空調も出現しました。シミュレーション解析や実測評価により、吹抜空間配置と建築全体の通風性を解析評価するとともに、空調との併用法を研究しています。
 そのほか、アトリウム空間の熱溜まり換気法やエントランスからの冬期の外気侵入の問題などについても研究しています。

空調設計のための気象解析

  冷暖房する上で過酷な気象の特徴を解析し、これをもとに空調設計用気象条件を開発する研究をしています。現在、冷房設計用あるいは暖房設計用の1日単位の設計用気象データを、拡張アメダス設計用気象データをして開発公開しましたが、今後、1週間単位の設計用気象データの研究を行う予定です。

空調設計用最大熱負荷の計算法

 省エネと健康な環境造りのためには、気候、建築自体の性能、建築の使われ方を考慮したうえで、空調システムを設計する必要があります。実務で手軽に利用できる空調設計用の最大熱負荷計算法や、コンピュータシミュレーションにより求める最大熱負荷計算法を研究し、また、オフィスや住宅の空調最大熱負荷の解析評価を行っています。

床冷暖房併用空調のシミュレーション法と設計法

 床冷暖房は、古くから利用されてきた冷暖房方法です。ところが、夜間に運転を停止することによる蓄熱の影響や快適性への放射熱の効果を推定するのは簡単ではなく、未だに十分な設計法が確立されてはいません。冷温風を吹出す空調と放射冷暖房とうまく組み合わせると、快適で省エネな環境造りができる可能性があります。床冷暖房併用空調の設計計算法の確立を目指して、詳細なシミュレーション解析や設計法の研究を行っています。